by uruotte

養生ってなに? ~個人の体質と体調を考える ~美髪のための養生のススメ⑨

温活

体を温めればだれでも健康になる?

ここ数年、冷え症に悩む方が増えています。その割合は女性で8割、男性でも4割にのぼるともいわれています。

たしかに「冷えは万病の元」。冷えが慢性化すると、気血の流れが滞り、痛みやコリはもちろん、髪の乾燥や薄毛、肌荒れや代謝の低下による肥満、免疫力の低下などさまざまなトラブルにつながります。

 

では、常に体は温めるべきなのでしょうか?

答えはNO。体を冷やさないことは健康の基本のひとつですが、それはあくまで”基本”。それが、自分の体質や体調にあっているかどうかは、別の話です。

 

その温活がアダになる!?

あるときに、「いくら寝ても疲れがとれずにつらい」という女性Aさんの相談を受けました。小さな会社の代表を務めるキャリアウーマンで、ふたりのお子様がいらっしゃいます。いろいろなイベントにも顔を出し、幅広い人脈をもつ彼女は、まわりの女性からも男性からも一目置かれるスーパーウーマンタイプ。美容と健康に対する意識もとても高い方です。

 

「とくに体の冷えには気をつけていて、夏もできるだけ冷房を使わないようにしているし、冷たいものは飲まないし、生野菜もあまり食べません。

根菜類や唐辛子、生姜、シナモンといった、体を温める食べ物をたくさんとるようにしています。冬は化繊ではなく、なるべく綿や毛の服を着て、お風呂にもしっかり入っています」

 

というAさん。冷え対策としては、なかなかの優等生です。食欲もあり、運動もしているというAさんの問題はどこにあるのでしょうか?

その温活はまちがっている?

 

疲れがとれないのが悩みという彼女の話をじっくり聞いてみると

  • 髪や肌が乾燥して、ふけやかゆみが出やすい
  • にきびや吹き出物がよくできる
  • 口内炎ができやすい
  • いらいらしやすい
  • ドライアイで、目が疲れやすい

など、さまざまなトラブルがあることがわかりました。

 

これらの症状からわかることは

「Aさんには冷え対策ではなく、熱対策が必要」ということ。

 

Aさんは、もともと冷えに悩んでいた訳ではありませんでした。
ところが、テレビや雑誌の冷え対策を見ているうちに「体は常に温めるべき」と思い込み、まじめに取り組んでいるうちに、だんだんと体に熱がたまっていってしまったのです。

火が水を蒸発させるように、体に熱がたまり過ぎると、体の水分が不足がちになります。水には冷やす力・潤す力・精神を落ち着かせる力があります。そのため不足すると、乾燥や熱によるトラブルが現れてきます。Aさんの症状~髪や肌の乾燥、にきび、口内炎、ドライアイ、イライラなどがまさにそれ。

 

では疲れやすさの原因?

Aさんは「いくら寝ても疲れが抜けない」とのことでしたが、実は「なかなか寝付けない」「眠りが浅く、すぐに目が覚めてしまう」といった、睡眠のトラブルも抱えていたのです。いくら睡眠時間を確保していても、しっかりと熟睡できていなければ、疲れが取れないのは当然です。

 

熟睡のための陰陽のバランス

漢方医学では、健康には「陰陽」のバランスが重要だと考えています。

一日の中では、昼は「陽」、夜は「陰」。

体の中では、熱は「陽」、水は「陰」。

 

中国の伝統医学では、脈だけでなく「舌」の状態をチェックして診断をします。Aさんの舌をみると、

  • 色は赤みが強い
  • 全体的に舌が細い
  • 表面の苔に亀裂が入っている

という状態でした。これは陰のエネルギーの不足を示す、典型的な舌です。

 

質のよい睡眠を得るには、昼に高まる陽の力がおさまり、陰の力が強くなることが大切。Aさんは、必要のない冷え対策で陽のエネルギーばかりを高めてしまったために、陰のエネルギーが弱くなっていました。

 

そこで、提案したのが

  1. 唐辛子、生姜、シナモンなどの熱性の香辛料を控える
  2. ゴマや松の実、豚肉や牛乳、卵といった、体の潤いを増やす食材を意識してとる
  3. お風呂は寝る直前ではなく、1~2時間前にはあがり、涼んでから布団に入る
  4. 寝る前に月を見ながら深呼吸をする

といった、熱を冷まし、陰のエネルギーを高める養生法。すると、Aさんは1~2週間でよく眠れるようになり、顔色もよくなり疲労感も徐々になくなっていきました。

 

自分に合った養生を

テレビや雑誌、ネットで得られる情報は、比較的多くの人に当てはまる原則的なこと。それが、自分の体質や今の体調に合っているとは限りません。

 

健康にいいと言われる食べ物や運動が、自分にとっては逆効果になることもあります。常に「それは自分に合っているのか」を考えること。そして「やってみて体の調子はどうなったのか」をチェックすることが養生の基本です。

 

 

鳴海美紀さん

国際鍼灸医師・国際薬膳師・健康美容コミュニケーター・養生文化研究家

鳴海美紀(なるみみき)さん

1997年北京中医薬大学に留学し、国際鍼灸医師、国際薬膳師を取得。さらにタイやスリランカ等アジア諸国の伝統医学を幅広く研究。帰国後は漢方・薬膳セミナー、美容サロンのメニュー作成・技術指導、店舗への薬膳レシピ提供、テレビ番組の企画、健康記事の執筆・監修

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